〈命を救う数字と言葉 - 007〉
25キロ
リスク10倍、女性と子宮体がん
まだ独身だった頃、ヨーロッパの白人女性とだけは結婚したくないと思っていた。歳をとると、ビヤ樽のような身体になるからだ。「お前もそう思うだろう」と友人に同意を求めたら、もちろん「それ以前に、そういった女性といい仲になるチャンスがお前にあるわけない」と言われてしまったが。
…というのは、医師の富家孝氏のエピソード。
女性は痩せる傾向にはあるのだが、歳をとるとそうではなくなる場合が出てくる。女性もグルマン、それも欧米の食事を好むようになったからかというと、それだけではない。閉経後、どうしても太りやすくなるのだそうだ。のぼせやほてりなどに悩まされるだけでなく、何かにつけてイライラも募り、やけ食いぎみになるらしい。女性ホルモンにエストロゲンというものがあり、閉経することで、分泌が抑えられる。そのためにコレステロールが増えることも肥満につながる。そして中年男性のように、お腹の内臓部分の周りに脂肪がついてくる。
それならば、エストロゲンを補充してあげればいいだろうということで、ホルモン療法がいっとき注目をあびた。しかし、今はあまりおこなわれていない。アメリカでの追跡調査で、脳卒中の危険性が41%、乳がんの発症率が26%、心臓発作が29%増加すると報告されたからだ。
内臓の周りに脂肪分が増えると、エストロゲンの一種エストロンが分泌され、今度は子宮体がんを引き起こしやすくなる、10キロ増えると、発症リスクは3倍に増え25キロ増えると10倍にもなる、とのことなので、そこにエストロゲンを補充したら、なおさらリスクは高くなるだろう。女性の太りすぎは困るが、太り気味になるのは仕方がないことなのだ。その場合、日本語には“ふくよかな”といういい形容詞がある。